√セッテン
「……うっさい」

女子2人揃うといつも静かな家も、うそのようにうるさかった。

ダイニングテーブルにノートを投げ出す。

英語は比較的まともに起きて授業を受けていた。

多分教え方と俺のスタイルが合うからだろう。

教科書の文章を目で追いながら、日本語訳をする。

2回目は音読する。キーとなるイディアオムは前後の文章を連続して読む。

そうすれば忘れない。

学校英語も国語と同じ、基本的に暗記だ。

暗記さえすれば、後はそれを解答用紙に転写すればいいだけだ。

「潤、ねぇーお風呂借りていいー?」

「あぁ、好きに使え」

「何か出てきそうで怖いし、ちょっと開けとこー、覗かないでよ?」

「はいはいはい」

敦子を適当にあしらいながら、教科書をめくる。

暫くページをめくる作業が続く。

集中していたせいか、敦子も山岡の声も聞こえなかった。


「あの、潤……」

声をかけられて振り返る。

山岡が立っていた。


「今日、ごめんね」

「いいよ、ほっとくと危ないのはどっちも変わらないし」

山岡は水槽の前に立って、俺を見ていた。

「明日ライブハウス探すの手伝うからね?」

「……聞いてた?」

「うん。二条って楽器屋さんもライブハウスも結構多いよ。探すのは人手あった方がいいし。……蔵持さんを見つけたら、このカウントが止るって決まったわけじゃない。けど、何かは分るよね」

俺は黙って頷いた。

お互い、無言になった。

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