√セッテン
「なんで」

『潤、悪いけど、そこにいて。私……そこいくから、大通りのコンビニのとこにいて、すぐいくから』

敦子からの着信は、そこで切れた。


勢いを削がれ、俺はケータイの画面を見て立ちつくした。

しょうがない。

俺が山岡の所に突然行っても、さっきの問答と変わりないだろうし

少しでも状況が分かる敦子がいた方がマシだろう。

また、無意識にため息が出た。



「……おまたせ。ごめん、ちょっと遅れたかな」

敦子は制服のままだった。

早く帰ったなら、着替えていてもいいもんだが。

「今日、ごめんね。試験受けようって思ってたんだけどさ、そんな気分には、なれなくて」

敦子は俺の目線を受けて、話し始めた。

「山岡のこと、何か知ってる?」

「千恵、潤に何か言った?」

俺の言葉を、敦子がかぶせた。

敦子の言葉の方が、より真摯だった。

「言った?って、どうして」

敦子は山岡のように、視線を遠くに向けてから、俺を見た。

「ケンカ……したから……」

敦子は気まずそうにして、頷いた。

「何の話したんだよ」

その言葉を聞きたくなかった、と言わんばかりに敦子は視線を落とした。


「……ッ……潤のこと」


敦子は言って頬を膨らませた。

「千恵が潤のこと、好きになっちゃいそうで怖かったから!」

握りしめた両手を震わせる。

「だから、千恵に……潤のこと、どう思ってるか聞いたんだよ」
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