√セッテン
「私が潤を好きになるのが、怖いって言ってた。でも潤を好きになるのも分るから、気持ちが止められないのも分ってるって」

そんなこと、言ってたな。

「敦子の気持ちも分るよ、でもね、私、この気持ちだけはハッキリさせておきたくて。学校でも言ったけど、付き合って欲しいとか、そんなじゃないんだよ」

「……」

「敦子には……勝てないし、それに、そんなこと、言ってる場合じゃないよね!」

目の前が、重くクラクラした。

俺にできることって、何なんだろう。

「山岡、俺たちに残されたのは、あと3日だ。俺は何より、答えに辿り着きたい。2人もちゃんと助けてやりたい」

「……うん」

「だけどもし、答を見つけられなかったら、3日後にお前に死がやってくるとしたら、どうする?」

「潤なら、助けてくれるって信じてるよ」

山岡は静かにそう言って続けた。

高く評価されるのは嬉しいが、曖昧に微笑み返すことしかできない。

「信じられる人だから、私、潤のこと好きになったんだもん」

山岡は言いながら、笑った。

「それに、守られてるだけじゃなくて、ちゃんと、潤や敦子のことも守りたい」

だから……と山岡は控え目に繋げて俺と視線を重ねた。

「敦子とは、ちゃんと仲直りしたいよ。私にそのつもりはなくても、絶対傷つけたから」

俺は黙って頷いた。

「ありがと、山岡」

「……ねぇ、潤。花火大会、楽しみだね」

「そうだな。その頃には死の待ち受けからも解放されて、みんなで笑ってられるよな」

「うん、絶対!」

山岡は力一杯頷いた。

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