√セッテン
「だから、景のためにももう、終わりにしないといけないと思った。
前にも言ったよな、景がもう止めてくれって俺に言ってるんだって。そう思うと死の待ち受けが自分のケータイに表示されてるなんてこと、後回しにできる」

リストの店舗名にまた斜線が引かれる。

「精一杯立ち向かえば、もし死んでも景は許してくれるだろ」

蔵持七海の目撃談は、どこへ行っても空振りだ。

「誰もあなたを責めたりしませんよ、渋谷さんだって責めたりしないと思いますけど」

だといいんだけど、と堀口俊彦は苦笑いすると顔を上げた。

「この件、蔵持が関係してるんだよな」

そう言えば堀口俊彦は蔵持七海を知っているんだった。

「画像が暗い……ってのもあるけど、普段の蔵持の姿を知ってたら、これが蔵持だなんて思えないよ」

リストから、またひとつ店舗が消える。

ふぅ、と息を吐くと、堀口俊彦が自販機からジュースを買って渡してくれた。

ジュースを飲みながら、今日最後のライブハウスへ向かった。

「そうだ、あとでみんなに見て欲しいものがある。景のケータイなんだ……」

「いいんですか?」

「悩んだけどな、蔵持に関係あるかもしれないし。霧島さんは蔵持と親しかったんだし、分ることがあるかもしれない」

「そう……ですね」

最後のリストに斜線を引くと、丁度集合の時間になっていた。

時間を堀口俊彦に告げて、来た道を戻る。

喫茶室コートダジュールに向かいながら、リストを折りたたんだ。

「何も収穫はなし、か。これで本当に解放にたどり着けると思うか?」

堀口俊彦の言葉に、俺は何も答えを返さず歩き続ける。

< 175 / 377 >

この作品をシェア

pagetop