√セッテン
池谷美保のメールは微妙に読みずらかった。

だがあのハッピースタンド掲示板の、象形文字みたいなギャル字に比べればまだ読めた。

メールの文章で、大体の性格や思考が分った。

河田が、『性格キッツかったらしい』『目立ち系のギャル』と言っていた。

それ以上にとても感情的というか、気持ちを重視する人間のように思えた。

理屈じゃなくて、感情。

そういう意味では敦子みたいなもんか。

っていうか、女はみんなそういう傾向あるけど。

「にしても……犬?」

一体なにに例えたかったんだろう。

池谷美保のメールの、この前のメールを覗く。

題名には「Re」が入っている。

何回かメールを交換したのだろう。

1つ前の話題のメールを探した。

「僕の調べではね、あの3人組は全く使えなかった。もちろん記者としてアタックせずに、純粋に七海の保護者として彼らにコンタクトしたんだけどね」

霧島悠太はフライドポテトをつまむと、ポイ、と口に投げた。

「知らない、自分たちも探してる、そもそもお前が怪しい、なんてね……」

霧島悠太は皮肉めいた微笑みを浮かべた。

「まぁ、僕ですら、七海の全て理解していたワケじゃないけど、七海は1日の半分以上を学校で過ごしていて、彼らが何の情報も得ていないなんて、ありえない」

「それはそうですね。俺は蔵持とは親しくありませんでしたが……逆に言えば親しい人はとても限られて見えました」

堀口俊彦の言葉に、霧島悠太は頷いた。

「彼らは直接事件に関係なかったとしても、絶対に何か知っていたはずなんだ」

今そんなことを言ってもしょうがないのは分ってる。

彼らは死んだんだ。ムーントピックで。

「池谷美保って、甘川充と吉沢アヤト、どっちが好きなんだ?」

一通りのメールを読んだあとの疑問を投げた。

霧島悠太、そして堀口俊彦に。

「え? そうなの?」

山岡が3人の関係に驚いていた。
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