√セッテン
「おつかれ、潤」

玄関を開けた敦子と言葉を交わす。

すぐ怪我をした足を見た。

「まだ痛いか?」

「歩くとちょっと……ま、大丈夫。スポーツやってる私には怪我なんて日常茶飯事だし」

玄関の鍵を閉めて、足を守るようにして敦子はダイニングへ移った。

「ご飯は?」

「食べてきた、敦子はちゃんと食べたか?」

「んー ちょっと食欲ないから」

「ちゃんと食べろよ」

「潤に言われたくないな。このオレンジジュース人間。切ったら血じゃなくてオレンジジュース出てくるでしょ」

それは人間としておかしい。

「まぁいいや、今日の探索でのこと、敦子にも説明する」

俺もソファーに座って、視線をローテーブルに投げたまま、今日の探索の話をした。

「まさかさぁ、蔵持さんが自分から逃げてるってことないよね」

「つまりもう二条周辺にはいないってことか」

「そうだよ、可能性はあるよ。こんだけ探してるのにさぁ」

「呪い撒くだけ撒いて逃げて、何がしたいんだか分からないぞ?」

「あーそうだよね。たしかにあの待ち受けは……そんな生易しい雰囲気じゃなかった」

敦子は言いながら自分のケータイをチラッと見た。

「画像、毎日変わるでしょ、怖いんだけどさ……でも助けてって、言ってると思うとまるで自分も蔵持さんと同じになった気がするんだ」

「同じか……」

「そのうち、夢に出るのかなぁ、千恵みたいに。
嫌だな……でもさ、蔵持さんだって死に怯えた日を送ってた……って死んだことにしてるけど、わけでしょ?」

そう、残り1日に表示されるあの遺書めいた言葉

私は死ぬ、お前も死ね

< 193 / 377 >

この作品をシェア

pagetop