√セッテン
「……」
はた、と手元の教科書を見る。
もう一度、例題の書き取りを始める。
人見知りの少女が、恋をするのはどんな男だろう。
あのガラスの瞳が、恋焦がれてみる先には誰がいたんだろう。
「……」
また、オーラルの例題を書き取る思考が止まっていた。
しょうがない、気になる方を片付けてからにしよう。
ケータイを取り出した俺を、眠そうにしていた敦子が視線を投げる。
「どうしたの……?」
「ちょっと電話」
ペンを置いて、霧島悠太の番号を呼び出す。
暫くの間をおいて、霧島悠太が電話に出た。
『やぁ、無事家に帰れたかい?』
霧島悠太の声には雑音が混じっていた。
まだ、堀口俊彦と一緒に、喫茶店コートダジュールにいるのだろう。
「今は飯島の家です」
『あぁ、君のイトコね……ちょうどよかった、分かったことがあるんだよ』
「分かったこと? 俺もちょっと聞きたいことが」
『ん? 推理のお手伝いならいくらでも』
「蔵持七海は、誰か好きな人がいたんですか?」
『……』
電話の向こうで、息がつまるような音が聞こえた。
『僕? とか言ってみたいけど、僕は片思いだね』
「切ないですね」
『君の言葉に重みがないように聞こえるな、気のせいかな』
霧島悠太は言って笑った。
『いたよ、ただ、僕は正確にはだれかは分からない』
「いたんですね……」
はた、と手元の教科書を見る。
もう一度、例題の書き取りを始める。
人見知りの少女が、恋をするのはどんな男だろう。
あのガラスの瞳が、恋焦がれてみる先には誰がいたんだろう。
「……」
また、オーラルの例題を書き取る思考が止まっていた。
しょうがない、気になる方を片付けてからにしよう。
ケータイを取り出した俺を、眠そうにしていた敦子が視線を投げる。
「どうしたの……?」
「ちょっと電話」
ペンを置いて、霧島悠太の番号を呼び出す。
暫くの間をおいて、霧島悠太が電話に出た。
『やぁ、無事家に帰れたかい?』
霧島悠太の声には雑音が混じっていた。
まだ、堀口俊彦と一緒に、喫茶店コートダジュールにいるのだろう。
「今は飯島の家です」
『あぁ、君のイトコね……ちょうどよかった、分かったことがあるんだよ』
「分かったこと? 俺もちょっと聞きたいことが」
『ん? 推理のお手伝いならいくらでも』
「蔵持七海は、誰か好きな人がいたんですか?」
『……』
電話の向こうで、息がつまるような音が聞こえた。
『僕? とか言ってみたいけど、僕は片思いだね』
「切ないですね」
『君の言葉に重みがないように聞こえるな、気のせいかな』
霧島悠太は言って笑った。
『いたよ、ただ、僕は正確にはだれかは分からない』
「いたんですね……」