√セッテン
『さすがに、誰? なんて聞けなかったからね。七海の思い人がどうかしたのかい?』

「……いや、気になっただけです」

『気になっただけ?』

霧島悠太がすっとんきょうな声を上げる。


『黒沢君、七海に恋でもした?』


霧島悠太の言葉に、胸がざわっとした。


「恋?」

『そうだよ、理由もなく、恋人のことを探るなんて』

「……俺は死の待ち受けの謎を解きたいだけです」

『そうだね。七海と話したこともないのに、僕の想像が飛びすぎたかな』

霧島悠太が言って笑った。

「それで、霧島さんが分かったことって?」

『そう、それでね君がくれた死の待ち受けの一覧を分析したんだ。あと11日とカウントされた待ち受け。七海の後ろに雑多にモノが散らばっててね、それを調べたんだ』

「よく調べましたね」

『手がかりになるようなものなら、どんな細かいことでも調べるよ。ラッキーなことに、僕は出版社の人間だからね、紙のたぐいなら専門分野だ』

霧島悠太はそこまで言うと、一呼吸置いて続けた。

『薄い緑色に、左上に濃い緑の円を縁取った雑誌、見覚えのある装丁でね、君、アルバイト情報誌とかって見たことある?』

「本屋とか、コンビニの入り口にある奴ですよね」

『そう、無料で配っているやつ』

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