√セッテン
「それは、たしかに特別って意味だろう」

蔵持七海の視線は、吉沢アヤトへ向けられていたのか……

だとしたら……


「理解できない」

堀口俊彦は呟いた。

「蔵持は、好きな相手を殺したってことだろう?」


俺は手元のサラダを黙って食べる。

正面の霧島悠太、隣の堀口俊彦は、食事の手を止めて酷く重苦しい空気を背負っていた。

2人が黙っているのをいいことに

俺は食事を終えてオレンジジュースを口にした。

ここのオレンジジュースは……甘い。

「昨日、お前と山岡さんが帰ったあと、霧島さんと俺で、景のケータイを調べたんだ」

堀口俊彦が、重い口を開く。

「お前も聞いてきたよな、池谷は、甘川充と吉沢アヤト、どっちが好きかって」

「はい」

「池谷美保は、甘川充じゃなくて、吉沢アヤトが好きだったのかもしれない……」

「蔵持七海が吉沢アヤトが好きだということなら、今分りましたけど……どうしてですか? そういうメールはなかったですよね? 根拠が足りないと思いますが」

俺の言葉を、霧島悠太が受けた。

「池谷が景に送ったメール全体の要約はこうだ」

『好きな人ができた』

『景にしか相談できない』

『裏切られ、裏切りが許せない』

堀口俊彦は、例題をあげるように言ってまたコーヒーを口にする。

そういえば、血統書付きの犬に例えて

池谷美保はなにかグチを書き連ねていた。
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