√セッテン
シンと冷えた空気は、ここだけ季節も時間も止まっているかのようだ。

懐中電灯をひっぱりだすほど暗くはない。

目が慣れてきて、周りを見回す。

チケットカウンターに立つと、正面にソファーがあるのが見えた。

そういえば、死の待ち受けにソファーの写真が写っていたが、あれもこういったフロア内の写真なのだろうか。

死の待ち受けに写っていたソファーはたしか白。

正面のソファーは暗くて何色か分らないが、色が濃かった。

ソファーを見てから、中への入り口を探す。

入り口はチケットカウンター傍にあった。

重いドアは堅固なせいか、しっかりとしていて、店が潰れたというのに現役だった。

両手で力を込めて押し開ける。

癒着したものを引き剥がすようにしてドアが開かれた。

中の空気は清浄とは言えなかったが、悪くもない。

ただカビくさい。

湿気だろうか。

懐中電灯を点けて中を照らす。

「……」

フロアとしては、さして大きくはない。

他で覗いた照明設備より、幾分か立派に見えた。

ゆっくりと中へ入る。
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