√セッテン
懐中電灯を向けるより、視線がそれを確認しようとする方が早かった。


手に力を込めて、ノブを戻そうと力を込める。


だがノブはびくともしない。

向こう側に誰かいるのか?


「誰かいるのか!?」

ドアを叩く。


ごわついた音が、自分に反響してくる。

だめだ、ライブハウスは防音……!


叩く手を止めて、ふ、と息を吐く。

……取り乱しても無駄だ。

状況を把握しなければ。

高鳴る心臓をよそに、頭を冷却させようとする。


とりあえずフロア全体を懐中電灯で照らす。

人影はない。

ステージの方まで歩いていく。

もちろんそこに楽器などはなく、倒れたマイクスタンドが1つだけあった。

袖から外へ出られないかと潜ったが、ドアは固く、外には出れない。

他にも出口がないか探したが見あたらない。

当たり前か、防音室なんだ。

簡単にあちこちから出れるワケがない。


懐中電灯で中をくまなく照らす。

廃墟というにはまだ生ぬるい、放置されてまだ数ヶ月……というところなのだろうか。

遮蔽された空間は、ひどく暗い。暗闇が苦手な奴は、間違いなく卒倒するだろう。

一通り、辺りを物色するが、何もない。
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