√セッテン
「にしても消灯時間は無視していいのか? ここ病院だろ? 」

「余計なところに頭が働くなら大丈夫だな。今医者呼ぶから」

堀口俊彦は言って、入ってきたかと思ったらすぐ出ていった。

「ここね、堀口先輩の病院なんだって。知ってた? 」

山岡は涙を擦りながら続けた。

そんな話は聞いていなかった。

興味もなかったせいもあるが。

「それで、すぐここに運び込まれて……」

山岡の涙は、本人の意思に関係なく落ちるらしい。

また山岡は懸命に涙を拭いた。

「……そんなに泣くなよ。大丈夫だから」

「だって」

山岡は即否定した。

「だって、私が死ぬなら覚悟もしてたけど、潤が死ぬかも、なんて、考えてもいなかったよ。堀口さんから連絡があったとき、私、本当に死ぬかと思った。よかった、よかった本当に」

ドアノブを回す音がして、視線を投げる。

敦子がいた。

「もう起きても平気なの?」

「……ん……まぁ」

「ホント、マジ勘弁して、ありえないから」

敦子は言って、手にしていたオレンジジュースを俺の膝の上に載せた。

「私、本気で探したんだよ。潤のこと見つけたの、私だったんだからね!!」

「大変だったんだよ、敦子、霧島さんのこと……」

「まて、2人一気に話すな。整理しろ」
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