√セッテン
俺の言葉に2人は顔を合わせる。

「いつもの潤だ」と前置きをして、嬉しそうな笑顔を浮かべた。

「うん、そうだね」

敦子は丸椅子を引っ張ってきて座ると、ベッドに肘をつきながら話を続けた。

「潤が約束の時間に集合場所に来なくて、堀口さんと霧島さんが電話したんだけど、繋がらなかったらしくて。堀口さんから私に、潤が戻ってないか? って聞かれたんだ」

山岡はうんうん、と頷いた。

「潤に連絡が取れなくなったっていうから、すぐ堀口さんのトコ行ったの。で、探索の話とか聞いて……」

「その時、敦子、霧島さんのことグーで殴ったんだよ。びっくりしちゃったよ」

山岡の言葉に、敦子は、ちょっと申し訳なさそうな顔をして、唇を尖らせた。

「だって、霧島さん……」

山岡はその時の事情を事細かに説明してくれた。

敦子の右ストレートをまともに食らったらしい。

霧島悠太も、今頃処置室に違いない。

「私もすごい取り乱してたけど、敦子の方がすごかったよ。潤が死んだら、あんた殺してやるって、だから変なこと言うなって……」

変なこと?

俺が死んだとか、どうとか? そういう話か?

「……おい、敦子」

「本気で殴りかけたけど、手加減したよ」

あとで、頭下げておいた方がいいかもしれない。

「とりあえず、それでね、潤が回ったライブハウス、全部手分けして、ほんと、トイレから掃除用具入れまで全部探させてもらって、それでやっと潤のこと、見つけたんだよ」

「……蔵持七海は?」

「蔵持七海? まだ見つかってないよ……」

「違う、俺のいたライブハウスには、いなかったよな?」
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