√セッテン
「……密閉された場所に、逃げ込まないようにしなきゃってことだよね」

「そういうことだ。逃げ込まれたら、こっちじゃどうにもできないことは、森の時によく分かった」

「√の女と鉢合わせなんて、絶対嫌だわ」

敦子は言って、ぎゅ、と手を握り締めた。

「でも……今、この世界でさ、完全に開放された場所なんて、ないよね」

「そうだね……本当に開放された外って、結構ないものだよね」

敦子は言いながら、白い天井を見上げた。

「俺たちは、必ずなにかに内包されてる。それはしょうがないことだ」

既成概念、プライド…嫉妬、恨み、嘆き、そう言った概念的なもの

部屋の外には廊下、廊下の外にはエントランス……

物理的な閉鎖空間

精神的な閉鎖空間

人間がその空間から解き放たれるとすれば、生か死かのどちらかしか答えはない。


完全に解放されるなんて、無理だ。


でも


だれかが傍にいるから、その息苦しさを緩和できる。


「とにかく密室には注意して、誰かが必ず傍にいるようにした方がいい」

「そうですね」

「でも、俺はギリギリまで蔵持を探すからな」

堀口俊彦は言って腕を組む。

「俺も探しますよ」

「潤は無理しちゃダメだよ」

山岡がすぐ突っ込んでくる。
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