√セッテン
「俺が答え出すの信じてるんだろ? だったら止めるなよ」

俺の言葉に、山岡は気まずそうにして重ねた手を握り締める。

「霧島さんは?」

俺の言葉に、堀口俊彦は肩をすくめた。

「今、十条の方のライブハウス、1人で調べてるよ」

「こんな時間に? 遭難者がまた増えるよ」

敦子が声を上げた。

遭難者っていうのは、まさか俺のことか。

「もー、私、電話してみる……って、あぁ、ダメだよね私ので電話したら。ほんっとめんどくさい。潤、ケータイ借りていい? 」

敦子はイライラしながら、袖机の上のカバンを見た。

俺の反応を待たず、D902iが敦子に奪われて行った。

「……霧島さん、責任感じちゃったのかな」

山岡の言葉に、違うだろ、と堀口俊彦が一言付け足した。

「敦子が霧島さんのこと殴ったのね、霧島さんが、潤じゃなくて自分がなればよかったのに、みたいなこと言ったからなんだよ」

山岡は言って、目尻を下げた。

「誰だから、いいなんて、そんなことないよね。それじゃ、死の待ち受けと同じだよ」

「飯島、結構しっかりしてんだな」

「森先輩のことがあったからじゃないかな……って、別に敦子のこと、昔から知ってるわけじゃないけど……」

「ん? お前達、付き合い長いんじゃないのか?」

堀口俊彦は意外そうな顔をしていた。

「うぅん、違います」

「死の待ち受けがくれた、唯一の宝物ってとこか? 」

堀口俊彦の言葉に、山岡ははにかんで笑った。
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