√セッテン
「あと、1日……」

死刑宣告の待ち受け画面を見る日が来た。

眉間の辺りに渦巻く頭痛をもみ消すように、俺はベッドから降りた。

起きあがると頭がクラっとしたが

急な動きをしなければ別に異常はなかった。


ベッドの横に揃えてあった革靴を履いて、病室を出る。

廊下は緑色の蛍光灯に照らされて、シンとしていた。


無人のようだった。

廊下の向こうには人影はない。

俺は周りを見渡しながら、ナースステーションの前に通りかかった。

「どうしたの? 調子が悪いならナースコールで……」

中に詰めていた看護師が俺に気づいて声をかけてきた。

山岡が通って行ったか聞くと、お見舞いに来ていた子なら、さっき帰っていったわよ、と言って、にこにこと笑っていた。

「さっきですか。すみません。病院の入り口まで見送りしてもいいですか」

「入り口? 正面は閉まってるから、裏の方から出てるのかもね。あ、教えてなかったからもしかして正面入り口にいるかもしれないわね」

じゃあ、今頃それに気づいて折り返してくるころか。

俺は病棟の出入り口の方を見て、それから看護師の方へ頭を下げた。

「すぐ戻ってきてね」

看護師は言って執務に戻った。
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