√セッテン
正面の大きい柱に貼られた病院の案内図を見る。

トントン、と指でリズムを取りながら、各部を覚えた。

外来の方はシン、としていて

奥の方だけ明かりがついていた。

正面玄関に限ってはもう照明も落ちて、非常灯だけが濃い緑に輝いている。

異様に伸びる黒い影が、まるで人の影のようにも見える。

不気味だ。


薬剤師詰め所と書かれた待合いの椅子の間を通り抜けてあたりを見回す。

正面フロアは大きめで、一般外来受付、入院受付などカウンターが並んでいた。


カウンターの前を通ると、少し明るくなった。

病院の入り口は硝子張りで、まるで百貨店の入り口のように、明かりを取り込む仕組みになっていた。

入り口も二層の自動ドアになっていて……



そこに山岡がいた。


山岡は外と病院の間。

自動ドアのエントランスに立っていた。


俺が近づいていくと、山岡が俺に気づいて驚いた。

タクシー待ちで中にいたのだろうか。

「……!」


ん?

山岡の反応がおかしかった。

自動ドアまで近づく。


だが開かなかった。
< 237 / 377 >

この作品をシェア

pagetop