√セッテン
シャッターの降りた売店の端の公衆電話へ直行する。

手に馴染まない公衆電話のボタンをプッシュして、自分のケータイにコールする。

3コールして、敦子の声が俺の鼓膜を震わせる。

「敦子? 俺」

「あ、潤? 霧島さん見つけた。しばいといた」

電話の向こうの敦子がふん、と気合いを入れる様子が思い浮かんだ。

「堀口さんは? 合流できたか?」

「うん。一緒だよ。てか、潤、電話なんかしてないで寝てよ」

「詳細は後で話す。一緒の2人にも伝えてくれ。これからそっち行く。今どこ?」

「えーとね、鳴海」

「鳴海? どこまで行ってるんだよお前ら」

『霧島さんち、この近くなんだって、一端落ち着こうってことで……』

「それでお前、ノコノコついて行ってるんじゃないだろうな。男の家に上がるな!」

「えっだ、だって……あ、てか、さっきから潤のケータイにね、河田くんから着信あるんだけど? 一応取ってないけど、取った方がいい感じ?」

「河田? いや、こっちから連絡するよ、無視しといていい」

赤く点滅するカードの残数をチラリと見つめる。

「敦子、今いるトコロ、ナビできる?」

『えとね、堀口さんに代わる』

短い雑音の後、堀口俊彦と代わった。

『大丈夫なのか? 拝野先生に外泊許可もらったのか?』

拝野? 誰のことだか分からないが

適当に流し、現在地を聞き出す。

「分かりました、今から行きます」

『え? おい、ちゃんと紙メモったのか?』

「覚えました、じゃあ、あとで」

言って受話器を落とす。

電子音を立てながら、テレカを吐き出す公衆電話に、もう一度カードを押し込む。

先ほどと同じスピードで電話番号を押し込むと、暫くの間を置いて、もしもし? と声が返ってきた。
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