√セッテン
海沿いの国道を走る中で、ずっと海ばかり見ていた。

そこには何もないようだが

はるか太古にそこに命が生まれ

人を潤し

今でもそこは、地上に匹敵する未知と生物の宝庫だ。

だけどそれは、地上からでは伺えない。

ただ、静かに、そして力強く息づき、世界中を廻って行く。

自分の名前に三水がついているのは、海の一部になれた気がして好きだ。

蔵持七海の名前も海、がつくな

ふとそんな接点に気が付いて苦笑した。


「海、好きなの?」


運転手が声をかけてきたので、黙って頷いた。

「俺も好きなんだよねぇ、生まれも育ちも二条だから、どうしても海と切り離されたトコロじゃ生きていけない気がして」

運転手は話しながら、無線の雑音の合間に笑った。

地元、と聞いて

ふと、頭に蔵持七海の家のある、六条八幡神社のことを思い出した。

「六条八幡神社って知ってますか?」

「あ? あぁ、商店街の奥入ったとこにある、六条の丘のとこにあるヤツだろ、知ってるよ」

私鉄K線に面した、車折駅の傍、海に向かった高台にそびえる、八幡神社の分社。
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