√セッテン
「何? 潤……何か言いたげ」

「霧島さんは、別に1人でどうこうしようと『したい』わけじゃない」

「君の、大切な人を巻き込んだのは、僕にも責任があるから」

「責任はいいけどっ、でもそれを1人でどうこうしようとするのが嫌なの。潤を死の待ち受けの1件に巻き込んだのは山岸絵里子だよ。その後は千恵と私。誰か1人が悪いとか、そういうのは止めて。
みんなに責任があるの。僕が潤の傷を負えばよかったなんて、言ってどうこうなる話じゃないでしょ!」

敦子は早口で言うと頬を膨らませた。

「まぁ、お互いの気持ちは分かるけど……って犬猿の仲ってことだ」

堀口俊彦は敦子と霧島悠太を交互に見て頷いた。

「似たもの同士ですね」

俺は静かに補足する。

「潤が傷ついたら、私が許さないけど、アナタが傷ついたら、アナタを大切にしてる人が許さないでしょ」

「……そうだね」

霧島悠太の複雑な微笑みに、俺は言及することもなく敦子へ振り返る。

「敦子、俺の電話返せ」

まず用件を果たそうと、手を差し伸べる。

「あ、ごめんね、ありがとう!」

ケータイをスライドさせると、河田からの着信が3件あった。

昼過ぎに1件、後は連続で夕方に2件だ。

リダイアルすると、コールは短いうちに、河田と繋がった。

『もしもぉし、黒沢? 』
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