√セッテン
「奥に、もう1つ入り口が見えました……」


「……七海!」


霧島悠太が声を上げて入り口へと駆け寄る。

「堀口さん、敦子をお願いします」

俺は敦子を堀口に頼むと、霧島悠太の元へ急ぐ。

「霧島さん」

霧島悠太は、懐中電灯でドアノブに手をかけた姿勢のまま、俺に振り返る。

「ノブが回らない、鍵穴はないけど……ひどく重い」

俺は懐中電灯でノブを照らす。

たしかに鍵穴は見あたらない。

霧島悠太の手に手を重ねて、一緒に力を込める。

力を入れた瞬間、頭痛がした。

「……っう」

「黒沢くん? 大丈夫かい? 」

視界が歪む。



やばい……




「きり……しまさ」



膝をついたとたん、口元にあてていたハンカチが地へ落ちる。


アムリタの床は白と黒の市松のタイルが並んでいた。


「黒沢くん!」

「霧島さん、一端出ましょう、飯島もヤバイ」
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