√セッテン
視線を横に投げると、敦子が額に汗をのせたまま瞳を閉じていた。


……単純に、寝ていてもおかしくない時間だ。

睡眠不足の体に、あの特異な空間は堪えただろう。


敦子の額に乗った汗を拭いてやろうとポケットの中のハンカチを引き抜こうとすると、ケータイに触れた。

ケータイをどけて、少し汚れたハンカチを取り出す。

キレイな面で敦子の額の汗を拭く。

ケータイのパワーボタンに軽く触れて、時間を見ようとしたら、反応がなかった。


画面は暗いままだ。


なにかの拍子に電源を落としてしまったか、電池切れか。

お前もか、俺もちょっと電池切れしそうだ。

しょうがないのでそのまま置いて、俺も目を閉じた。






軽く閉じただけなのに、瞼は重かった。

頭の中が、シンと静まる。



寝ている時も脳は動いているというが、本当だ、といつも思う。

また、明晰夢だ。

夢だと言えるのは、さっき助手席で横になった記憶がはっきりと残っているから







そして、目の前に蔵持七海がいるからだ。
< 279 / 377 >

この作品をシェア

pagetop