√セッテン
乾いた唇が、潤んでいた。

「何考えてるんだ、俺」

はぁ、とため息をして、助手席から降りると、コンビニから敦子が出てきた。

「潤、おはよう!」

敦子は言ってペットボトルの水を差し出してきた。

車の中のオレンジジュースはぬるくなってしまったので、俺は敦子の水を受け取って口にした。

「敦子、大丈夫か?」

「え? 何?」

敦子は聞きにくそうな顔をして反芻を求めた。

「具合だよ、病院行くか?」

「大丈夫だよ。ゴメンね。なんか、急に気持ち悪くなったと思ったら、平衡感覚がおかしくなって」

「無理するなよ、それで霧島さんは?」

「さっきまでいたんだけど、アムリタちょっと見てくるって」

「俺たちも行こう」

「でも、潤はここに寝かしとけって、堀口さんが」

「もう寝たから。敦子、車の鍵は」

敦子から鍵を受け取ってドアを締め、鍵をポケットに入れてアムリタへ向かう。

「敦子」

声をかけるが、一歩先に行く敦子は振り向かない。

さっきも俺の声が聞きずらそうな顔をしていた。

後ろから敦子の手を掴んで止めると、敦子がひどく驚いて振り返った。

「なっ何!? 驚かせないでー」

「聞こえてる? 俺の声」

「え? あ」

敦子は少し視線を左に投げて、それから頷いた。

笑顔が、凍り付いていた。

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