√セッテン

生きて、助けを待って、でも誰も来ずに

ここで死んだのか。


そうだ、ただ自殺をするだけの人間が、助けを求めたりしない。


死ねばそれで終わりだろう。


蔵持七海はここに閉じこめられて、助けを求めてた。


森先輩が死に際にいた暗闇もまた

このアムリタだったんだろうか。


『ねぇ』

あのガラスの瞳から涙をこぼしながら

『出して……』


声を張り上げて

重いドアを叩いて

ずっと

ずっと


地下からこの階段にかけて、半地下となり

ケータイの電波は入らない。


蔵持七海に許されたのはこのホールの中で、声を上げることだけ。

だがここは防音。

俺が閉じこめられたあのライブハウスグレンチェッカーのように

音は中で反響して、消えて沈む。


俺があそこで得た体験と状況は全く同じだった。

誰かがこの重いドアを開けなくては、電波も入らないここで



蔵持七海は誰にも見つからない。



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