√セッテン
だが……

とりあえず不確定な仮説を立てる前に、中を見る方が早い。

もしかしたらこのケータイが蔵持七海のものじゃない可能性だってある。

充電中ではあったが、俺は電源ボタンを長押しした。

俺のケータイと同じウェイクアップ画面が映し出される。

なじみのある起動画面をじっと見つめた。


ぱっと画面が白くなる。

そして、ケータイの待ち受け画面が表示された。

待ち受けに表示されたのは、海の写真だった。


まず発信を確認する。

間違いない、蔵持七海のケータイだ。

最後の発信は、5月17日、池谷美保、吉沢アヤト、甘川充、そして霧島悠太に向けて発信されていた。

特に、池谷美保への発信は多い。

全員へ連続して発信していた。


息を飲んで、着信を見る。

着歴はもっと古く

5月17日以降の着信はない。

ある日を境に、着信がまったくなくなっている。

そしてその日を境に、蔵持七海は、何度も発信を繰り返している

そういうことだ。

その『境』で、蔵持七海はアムリタに閉じこめられたのだろうか。

助けを求めて、ケータイを握りしめる蔵持七海の姿が瞼の裏に浮かんだ。


着歴から視線をケータイ全体に移すと、ケータイの裏に、黒いものがこびり付いているのに気づいた。

元々側面は黒いデザインだが、裏は白い。

カメラのフタとライトのくぼみの間に、赤黒いものがついていた。

…………血、なんだろうか。

ちょうどケータイを持つと、指があたるあたりだ。

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