√セッテン
血が付いているということは、蔵持七海がホールに閉じこめられる前に、指を負傷していたということになるが……

不自然だな……

頭の端に仮説のポスト・イットを貼って、次にメールボタンを押した。

受信フォルダを開くと、ずらっとメールが並んで表示された。

フォルダ分けはされていないようで、受信フォルダに全てのメールが集まっていた。

最新

いや、最後のメールを読もうとすると、いきなり画面が切り替わった。




ビクっと手が痙攣する。


メールの受信だった。



メール受信のアニメーションは俺と同じ、機種に初期で設定されているものだ。

まるで自分のケータイを操作しているような感覚になる。

受信のアニメーションが終わると、画面が切り替わり、メール着信のランプが点滅した。

メールは52通

俺は受信フォルダに戻り、メールを開いた。

差出人は、霧島悠太が一番多い。

次に吉沢アヤトと続いていた。

池谷美保からの新着メールは1通もなかった。

俺はちらりと、運転する霧島悠太を見た。

顔をあげると、窓から見える海岸からの風が頬を撫でる。

『会いたい』

最新のメールはその一言だけだった。

最新と言っても、現在からすれば過去のメールだったが。


『どこにいるの』

日付をさかのぼっていく。

『君に会いたい』

霧島悠太の声が、耳の奥で響いてくるようだ。
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