√セッテン
残りは本文のないメールに、画像だけが添付されていた。

全部で15通。

それ以降のメールは、読む気にはなれなかった……


「潤」

声をかけられて、敦子を見る。

「どうしたの、難しい顔してケータイ見て……」

朝日に照らされた敦子の顔は血色が良く

生きているのだ、と深く思えた。

「……いや、何でもない」

蔵持七海のケータイをカバンに入れる。

車は堀口記念病院へついた。

白んだ空を阻むように、白とオレンジのツートンカラーの病院が視界に入る。

顔を合わせずらく、俺はすぐ病院の入り口へ向かった。

入り口には警備員が2人立っていて、正面の自動ドアが故障中で、迂回して入るように指示された。

ヒビの入ったガラスを視線の端に置きながら、迂回する。

「黒沢、とりあえず山岡のトコロ行くだろ? 飯島、お前岡部先生にすぐ見てもらえ、足の具合も一緒に見て貰った方が良い」

「え、大丈夫だよ……」

「いいから、お前部活体育系なんだろ? 故障は後にも響くから」

堀口俊彦は言って敦子の腕を引いた。

「じゃ、あとで、千恵のとこでね! 千恵って何号室?」

「108」

敦子のことは堀口俊彦に頼んで、部屋番号を短く告げると、敦子は頷いて病院の奥へ消えた。

残された俺と霧島悠太。

彼の色素の薄い瞳が、さらに薄くなって、もう何の色も写していないような気がした。
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