√セッテン
「お前がやってるのは、人殺しだ、蔵持、現実から目を背けるな!」

俺の言葉に、√の女はひどく嫌そうな顔をした。

「潤こそ、現実を見つめて」

√の女の手が再び伸びる。

殺意を感じ俺は窓を開けて、外へ飛び出した。

√の女の笑い声が背後からした。

「逃がさないよ」

受付に回って、霧島悠太、あと堀口俊彦と敦子に話さなくては

山岡は、今いない。

いるのは√の女だ。

√の女の動向が掴めない。急がねば。

痛みを抑えて再び走り出した。

病棟から、駐車場の後ろに抜ける。

受付に回ろうと正面に回ると、そこに√の女が立っていた。

2人いた警備員は、左右に伏せていた。

「殺したのか!?」

「広いと、鬼ごっこも楽しいよね」

クソッ

蜘蛛の巣状にひび割れたガラスの自動ドアを背に、√の女は首をかしげた。

「覚えてる? 潤」

まっすぐ√の女を見ると、華やかな微笑みが返ってきた。

「ここ、私と千恵との接点が生まれた場所、私はここで、千恵の心の闇に触れた。
似てるって思った……大好きな人がいて、泣き虫で、弱くて、私の気持ちを分かっていた」

冷たい汗が流れる。

「だから、千恵の味方をしたいって思ったの。千恵にも裏と表がある。私が解き放ってあげようって」

「余計なお世話だ」

「そうかしら」
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