√セッテン
見返りを求めず人を愛することなんて、たしかにできない。

いつか誰かが自分を愛してくれる、自分も誰かを愛し幸せになると思って

それは叶わなくて

大切な人たちに本当の自分を認めて貰えなかった蔵持七海

その悲しみや、憎しみが、今、目の前で渦巻いてる。

「何やってるんだ!」

声が横から降った。

声の主は、霧島悠太。

そう、か……気づいてくれたのか。

「山岡さん、黒沢君!」

走ってくる霧島悠太に、√の女は視線を投げた。

俺の首にからみついた手が離れる。

「げほっ……ゲホッ」

開放され、咽せるとまた、背中が痛かった。

「ゆぅ」

√の女は、霧島悠太と向かい合った。

霧島悠太は、その言葉に目を丸くして、足を止めた。

「え? ……な……なな、み?」

ゆぅ、という名は、蔵持七海が霧島悠太を呼ぶ時の特別な呼称だったのだろうか

その名を呼ばれただけで、彼は山岡の中の√の女、蔵持七海に気が付いた。

「く、黒沢君、これは一体……」

「ゆぅ」

「……」

霧島悠太は真剣な表情で√の女を見た。
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