√セッテン
落ちた意識をすくい上げるようにして、目を開けた。
だがぼんやりした膜を感じて
これは夢なのだと、気が付いた。
白い砂浜
白砂海岸だった。
周りを見渡そうとするが、体の自由はきかない。
ふ、と意識が途切れたかと思うと、目の前には蔵持七海が立っていた。
√の女ではない。
現実を生きていた蔵持七海。
蔵持七海は相変わらず黙っていたし、俺も何も言わずにお互いを見つめていた。
そういえば、この前の夢で蔵持七海は、大好きだった、と言った。
大好きだった、のは誰なんだろうか。
だれを信じていたのだろう。
お互い何も言わず、距離も埋まらないまま、見つめ合った。
この純白の中に、あの黒く渦巻くものが秘められているのだと
理解していたのだが、認めたくなかった。
蔵持七海がゆっくりと頭を下げる。
花冠が揺れて、瞬く。
下げた頭は、上がらなかった。
声を掛けようと口を開いたが、足元が崩れた。