√セッテン
視界が開けた。
「潤、泣いてるの? 恐い夢を見たのかしら」
目の前で、山岡……いや、√の女が微笑んでいた。
俺はやっと、本当の覚醒をした。
夢だ、嫌な……夢をみていた。
じっとりと、額から首にかけて、嫌な汗をかいていた。
「潤にとって、最悪の答えってそういうことなのね」
風を感じて、辺りを見回そうとすると、体の自由が効かないことに気が付いた。
後ろ手で拘束されて、挙げ句の果てに枷は柵に繋がれていた。
「ここ、学校。潤の大好きな屋上」
後ろに視線を投げると、昇降口がはるか下に見えた。
「ゆぅに邪魔されるのは嫌だし、千恵の記憶で行けて、かつ人がいない場所なんて、ここしかなかったから」
夏の風が、背中を撫でて吹き付ける。
「安心して、現実はここよ。もちろん、潤の見た夢も、すぐ現実になる。みんな死ぬ」
夢で見たのは最悪の答えだ。
俺は2人が死んで得る答えなんて、認めない。
あんな最悪な答えは、仮定でなくては許さない。
ひやりと冷たい手が触れて、涙を擦った。
夢の中で感じた冷たい感覚は、√の女の手だったのか。
自由の効かない全身でその手を拒否すると、√の女は笑った。
「もう潤が解く謎なんてないよ? 答えはここにある。潤がアムリタで朽ち果てた私を見つけてくれたから、死の待ち受けはもう消えたでしょ?」
「……消えたのは、敦子と、堀口俊彦の待ち受けだけだろう、安心しろとでも言いたいのか? お前が消えなきゃ、全ては消えない」
「なんだ、よく、分かってるね」
「あれで蔵持が救われたんなら、お前が山岡の中にいられるワケがない」
「そう、わたしを見つけてくれた人だけ、呪いは解ける」