√セッテン
「霧島さん」

敦子が、呆然とする。

山岡に発信するということは、自分から死ぬとそう宣言しているのと同じだった。

「僕は君を助けにきた、届かなかったけどずっと君に電話した、メールした、ずっと君に会いたかった」


√の女の手が震えていた。



なぜ死のうとするのかと、そう言った顔で霧島悠太を見つめていた。




霧島悠太の強い視線に射抜かれて、√の女は操られたように、ゆっくりと通話ボタンを押した。



おかしな光景だった。

目の前にいるのに、手の届くところにいるのに、2人はケータイを耳にあて、目と目を合わせている。


「君は僕の大切な妹だ。だけどそれ以前に君を愛してる」



 スピーカーに向かって紡いだ霧島悠太の言葉は、√の女の耳に、直接、そしてスピーカーを通して、両方から√の女を包み込んだ。

「ゆ……」

「僕は君を愛してるよ」


霧島悠太は、通話を切るとケータイを屋上に落とした。


開いた手が√の女の手を掴む。

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