√セッテン
は、と現実に戻ったような√の女の表情

俺も同じだった。

√の女は霧島悠太を振り切り、足を柵にかけて踏み切ると虚空へと舞った。



だめだ

このまま、落ちたら死ぬ。


山岡が死んだら、死の待ち受けが、俺にやってくる。

そしたら


枷に捕らわれたままの俺はそれを視線で追うことしかできない。



青い空と山岡が重なる。

瞬間、その空に、もう1つの影が被った。

それは山岡を抱くようにして、虚空を舞うと、重なって視界から消えた。

無理に立ち上がろうとすると、架せられた両手に激痛が走る。

影は霧島悠太だった。

「霧島さん!!」

色素の薄い瞳、蔵持七海と同じガラスの瞳と、一瞬目が合った。


背後

下方で、鈍い音がして、悲鳴が聞こえた。



...♪.....♪.♪.♪




俺のケータイの着メロが鳴った。


俺はただ、真っ青な空と対面することしかできず

柵に繋がれた両手から流れる血の香りにも気が付かず。

敦子と共に、呆然と鳴る着メロをそのままに、虚空を見つめていた。
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