√セッテン
『僕は片思いだよ』

はっきりとそう言った霧島悠太の言葉が、敦子の言葉と重なった。

『私……!諦められないんだもん!潤のせいだよ!』


「敦子」


敦子は何?と顔を上げた。

「山岡のトコロ、行ってくる。敦子は、霧島さんのところに行ってあげられるか? ……1人は寂しいだろうから」


「うん。でも……動き出したらどうしよ、あは」

敦子は自虐的に笑うと、それから軽く俺に手を振った。

「そしたら、本格的にお説教しとくね……」




あぁ、そうだ


思い出した。


霧島悠太はこう言ったんだ



『……自分に与えられた、最大の力を持って守ることを、愛するって言うんだよ』




病院にはたくさんの人がいたが、すべて視界には入らなかった。

ただ、何度も何度も、霧島悠太の言葉が繰り返された。

看護師に聞いて、山岡の休む病室の前に立つ。

ドアノブに手をかけると、声がした。
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