√セッテン
細工ガラスが光を偏光させて、俺の手元に歪んだ光を落とす。

「ゆぅも、殺してしまった」

ゆらゆらと、影が揺れていた。

「潤、あの暗闇から私を解き放ってくれた。恐怖と絶望の中、まっすぐに私に立ち向かってきた。あなたは、ゆぅと同じね」

「求めた答は同じだけど、欲しいものは違うよ。俺はお前みたいなヤツはいらないよ」

√の女は、鈴の音のように笑った。

「そんな言い方しなくても、千恵は潤は優しい人だって知ってるわ」

笑いが止む。

「ゆぅが教えてくれたけれど、でも、あなたの口から……答が聞きたいわ」

ドアの向こうで小さく鈴のなるような声がする。

閉じこめられ、暗闇の中、極限の15日間を彷徨った蔵持七海

アムリタのドアを、はじめに開いたのは池谷美保

そして2度目に開き、解放という彼女の願いをかなえたのは、俺

3度目に彼女の心のドアをこじ開けたのは、霧島悠太という最後の要。

はじめは恐怖が飛び出し


最後には、希望が残ったパンドラの箱のように


蔵持七海が待っていた希望は、俺ではなかったかもしれないが


だが、最期のこのドアを開け、答えに辿り着くのは俺だ。


「答えはもう出てる。答えは、お前の中にあるだろ?」


病室から差込む光が、俺の瞳を照らす。

まぶしいくらいの輝きの先に

答が無言で立ちつくす。



「だから、お前はもう帰れ、待ってる人は絶対いるから」


√の女は、静かに答を返してきた。






「そうね」

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