√セッテン
残された俺は、静かに山岡の病室に入った。


♪♪♪♪


ポケットの中から、アラーム音が鳴った。

鳴り続けているのは、蔵持のケータイだった。


そろそろ電池が無くなる、という警告のアラームだった。

俺は画像保存フォルダへ移動して、蔵持七海が撮影したアムリタの画像を1枚1枚確認しながら削除する。

画像はなんの抵抗もせずに、消えていった。

死へ導く式が、消えていく。

ここから発信されることはもう、2度とない。

死の待ち受け15枚を消し終える。

ゆっくり、蔵持七海のケータイの電源を落とした。


「潤……?」


声がして、山岡を見た。

山岡は黒い瞳を開いて、俺を見ていた。

差込む光がまぶしいのか、山岡は目を細めると、涙が落ちた。

「どうした?」

「私……」

「ん? 千恵だろ? 山岡千恵」

山岡は、混乱した様子で頭を押さえた。


「なんてこと、霧島さんのこと、私!」

「大丈夫だ」


「だって」

「大丈夫だ」


何の根拠もないが、山岡にそういって落ち着かせた。

黒い瞳が、夏の日差しを受けてまた潤んだ。

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