√セッテン
「先生、山岡のは?会う約束があるんで渡してきます」
はい、と開いた手を出すと、担任は教卓の中にある封筒を引き出して、山岡のテストを入れて封をする。
「炉端に捨てたり、忘れたりするなよ」
「センセー、そんなことするの、河田君だけだと思いますー」
誰かが声を上げると、どっと笑いが広がる。
河田君、バイクで事故って入院でしょ?
とささやきが聞こえた。
自分のテストをパラパラとめくる。
全教科合計を割って平均を出すと、オーラルコミュニケーションがやはり足を引いていた。
担任の長い話がはじまる。
外はこれでもかというくらいに青空で、遠く海の方に、入道雲が並んでいる。
「……難関大学へのチャレンジ精神を」
担任の言葉が右から左へと突き抜けていく。
あくびを1つ打つと、斜め前のクラスメイトに感染した。
やたらぬくい空気と、カーテン越しの柔らかな日差しが心地良い。
「数学、特に設問8の2。あれはW大の入試でも応用として出てる。今勉強したことが来年にも生かされる、ここだけすり合わせをしよう」
担任が教卓から離れて黒板に問題を書き写す。
「黒沢潤」
差し出された白いチョーク
俺はぼんやりと担任を見た。
やれ、ということだろうか。
担任は黒板からクラスに視線を返して、この問題の回答率が5%以下だったと言いながら、また面倒な話を続けた。
白いチョークをかるく握って、黒板にあてる。
空っぽの頭の中から、数学の公式を記録したノートを引き出す。
ノートを開くと、パッと花が咲いたように、白い紙面と、俺の記録が広がった。
開いた手でトントン、と指でリズムを取る。
黒板との摩擦ですり減る白いチョークの摩擦度を頭の端で思いつつ
ギリシア文字と数字を描く。
はい、と開いた手を出すと、担任は教卓の中にある封筒を引き出して、山岡のテストを入れて封をする。
「炉端に捨てたり、忘れたりするなよ」
「センセー、そんなことするの、河田君だけだと思いますー」
誰かが声を上げると、どっと笑いが広がる。
河田君、バイクで事故って入院でしょ?
とささやきが聞こえた。
自分のテストをパラパラとめくる。
全教科合計を割って平均を出すと、オーラルコミュニケーションがやはり足を引いていた。
担任の長い話がはじまる。
外はこれでもかというくらいに青空で、遠く海の方に、入道雲が並んでいる。
「……難関大学へのチャレンジ精神を」
担任の言葉が右から左へと突き抜けていく。
あくびを1つ打つと、斜め前のクラスメイトに感染した。
やたらぬくい空気と、カーテン越しの柔らかな日差しが心地良い。
「数学、特に設問8の2。あれはW大の入試でも応用として出てる。今勉強したことが来年にも生かされる、ここだけすり合わせをしよう」
担任が教卓から離れて黒板に問題を書き写す。
「黒沢潤」
差し出された白いチョーク
俺はぼんやりと担任を見た。
やれ、ということだろうか。
担任は黒板からクラスに視線を返して、この問題の回答率が5%以下だったと言いながら、また面倒な話を続けた。
白いチョークをかるく握って、黒板にあてる。
空っぽの頭の中から、数学の公式を記録したノートを引き出す。
ノートを開くと、パッと花が咲いたように、白い紙面と、俺の記録が広がった。
開いた手でトントン、と指でリズムを取る。
黒板との摩擦ですり減る白いチョークの摩擦度を頭の端で思いつつ
ギリシア文字と数字を描く。