√セッテン
その白の中に、ふと黒い波が浮かんで見えた。

緩く黒いウェーブ

髪をカチューシャのように三つ編みにして編み込んだ

厚い前髪。

立幸館の制服。


「蔵持」


唇だけが動いて、その影を縫い止めようと音のないの声が漏れる。

蔵持七海の白い手が手前で交差する。

パチパチ、とそれは拍手となり

クラス中に広がるころには、蔵持七海の姿も見えなくなった。

風に揺れるクリーム色のカーテンが、彼女に見えたのだろうか。

瞬きをすると、担任が背中を叩いた。

「ほぉら、拍手されてるぞ!黒沢!」

「痛ッ!!!」

蔵持七海に叩きつけられた時に痛んだ背中に直撃して、思い切り声を上げる。

予想外の反応に拍手は止んで、代わりに笑いの雨が降った。



…………

蔵持七海、笑っていた。



妙な空気のまま、席に戻る。

説明が終わると、HRは終了した。


「潤! 千恵のお見舞い行こう!」

廊下で敦子を拾って学校を出る。

外は梅雨の合間の晴天で、頭が痛くなるほど空が高かった。
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