√セッテン
だが

イラついて思考を鈍らせてもしょうがない。

「森先輩を助けるためにも、今日1日でどうにか解決策を見つけていかないとな」

「うん」


駅に着くと、電光掲示板が忙しく点滅している。

人身事故による電車遅延のお詫び

というテロップが流れている。

電車自体は動き始めているようだが、ホームは人でいっぱいだった。

そうだ、堀口俊彦に電話しなきゃな

昨日遅くに送ったメールは、ちゃんと見てくれているだろうか……

堀口俊彦の電番を押して通話を開始する。

周りを見れば、半分以上の人間が、ケータイ片手にネットやメールをしていた。

この中に、死の待ち受けが表示されているヒトがいるのだろうか……


『……もしもし』

考え事をしていた頭を切り替える。

「おはようございます。昨晩ムーントピックでお会いした二条西の黒沢です」

スリーコールで出た堀口俊彦の声は、低かった。

『昨日の奴か。さっき、あんたと一緒にいたチャラ男からも電話があったよ』

「……渋谷さんは」

『悪いけど、今は人と長電話できる気分じゃない。悪い』

「1つだけ!……渋谷さんの、最後の発信と着信は、わかりますか」

『……』

「本当に死ぬんです。これ以上被害が広がらないようにするためにも、教えてください」

『心配しなくていい。景の怯えようは半端じゃなかった。だから家に電話させて、家から景のケータイにコールバックした。着信も発信も家だ、待ち受けなんて、表示されようがないだろ?』

堀口俊彦は言って乱暴に電話を切った。
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