√セッテン
「かわ……」

敦子が顔を上げて河田を止めようとしたが、その視線を俺が遮った。

「バカは死んでも直らない」

「格言だな」

河田は言って笑った。

「だけど、黒沢、お前目がキれてるよ」

敦子に、藤田とかいうバカはそんな仕打ちをしたのか。

森先輩を目の前で失って

それでも立ち向かおうとしてる敦子に。

「敦子、昔から言ってるだろ、なんかされたら俺に言えよ」

「……これは、私の問題だもん」

「意地張るなっ! そうやって大切な時に柔軟な考えができないからいつまでもお前はバカなんだよ!」

「ちょ、ちょっと~黒沢君、イトコだからってそれひどくない?」

マイと呼ばれた女に言われた言葉に、河田が頷く。

「潤はいつだって、なんでもクールに解決しちゃうじゃん。頭いい人と一緒にしないで。普通の人は悩んだりするんだょっ!」

敦子は言って俺にハンカチを投げつけてきた。

「敦っちゃん、それはそれで、言い過ぎ」

河田はどっちの味方なのかそういって間に立つ。

俺はハンカチを拾い上げて敦子に投げつけると、階段を1人降りていく。

苛立って、敦子に怒鳴ったことを後悔しながら廊下を進む。

敦子も山岡みたいに、不安だってはっきり言えばいいのに。

1人で悩もうとするクセは、相変わらずだ。

2Dの教室前で、河田に腕を引かれて足が止まる。

「おい、待て、どうどう」

「なんだよ」

「敦っちゃんにもあんな心にもないこと言っちゃって。敦っちゃんは不安なんだよ。お前に心配かけないようにって」

「言われない方が心配だ。敦子は昔からそうだ」

そして、1人で悩んだことを、あとで後悔するんだ。

「落ち着け、退学はマズイ!今後の人生プラン考えて、卒業してからにしろ!」
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