雨のスキキライ

まず音が嫌だ。
百歩譲って、小雨は許せる。
でも、大雨はダメ。

あのとめどなく地面にたたき落ちていくあの音。

あれだけは、嫌だ。
耳を塞ぎたくなるくらい。


それから、靴下が濡れるのも嫌。
靴だってずぶ濡れになる。

朝から足元が冷たかったら、一日中最悪な気分になるし。


あとは、髪がまとまらない。
特に前髪。

女子としては、髪の調子が最悪だと、外を歩く気なんてなくなる。


とまあ、雨が嫌いな理由なんて上げればきりがないレベルだ。


それなのに、透真(とうま)はそんな雨を好きだって言う。


高校に入学して半年。
かなり気が合って、付き合うようになったけど。

雨に関しては、まったく意見がかみ合わない。


涼花(すずか)さん、今日は調子が悪いのかな?」


放課後、廊下の窓の前に立って真っ黒な雲を見上げていたら、透真が隣に来た。


透真は私のことをさん付けで呼ぶ。
呼び捨てでいいって言ったのに、恥ずかしいからとか言って、断られた。


「そういう透真は嬉しそうだね」
「雨だからね」


まるで音符でもついているような言い方だ。

私だってその答えだが、言い方は大きく違うだろう。


「本当に雨が好きなんだね。なにがそんなにいいの?」


透真は片側の口角を上げた。
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