雨のスキキライ
この隠しごとをするような男と帰る気もないけど、帰らないでいることなんてできないから、仕方ない。
一緒に帰るか。


諦めて足を進めると、透真は嬉しそうについてきた。


私は紺色の傘を、透真はビニール傘を差して雨の中に出る。

傘が雨を弾く音が耳を独占していって、面白くない。


校門をくぐると、透真が前を歩き始める。


そうだ。
これも雨が嫌いな理由だ。
透真と並んで歩けないなんて、つまらない。


透真の足の動きを見ながら歩いていたら、透真が止まった。
横断歩道の前で、赤信号だ。

そこで私は透真の隣に立つ。


「やっぱり、雨は好きじゃないな」


耳障りな雨音に紛れて、透真の不服そうな声が聞こえてきた。


気になったけど、どうせ教えてくれないような気がして、透真の顔を見ることしかできなかった。


「涼花さんとのこの距離が、理由だよ」


私の名前を呼ぶことは恥ずかしがるくせに、こういうことは照れずに言い切るから、こっちのほうが恥ずかしくなる。

私は傘に隠れた。


「涼花さんの顔も見れないし」


いつも嫌いな雨の音。
今だけは味方して。

顔が熱すぎる。


「僕は涼花さんと並んで帰る時間が好きだからね。こういうときだけは、雨を恨みたくなるよ」
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