助けてください!エリート年下上司が、地味な私への溺愛を隠してくれません
本当なら、そのまま直帰しようと思っていた。
許可ももらった。
と言うわけで、帰りの電車を調べようとして……気づいてしまった……。
「スマホ、会社に忘れた……」
自分で言うことではないかもしれないが、それなりにスマホ中毒であり、電車の中では1にスマホ、2にスマホという私。
ちなみに最近のマイブームは、この間からやり始めた恋愛シミュレーションゲーム。
だから、よっぽどなことでない限り、自分がスマホを忘れるなんて、あり得ない。
まあ、あんなに動揺していたのだから、仕方がないと言えば、仕方がない。
「……加藤さん……?」
「帰るんでしょう?」
「……一緒に会社戻ります……」
「何で」
「ちょっと残業でもしようかな……と思いまして?」
「……ふーん?」
私の思考なんかお見通し、というような含み笑いを浮かべる加藤さんから目線を逸らして
「はははは」
と乾いた笑いで返すしかなかった。
夜の、都心に向かう電車は、比較的空いている。
この後、反対側の混み込みの電車に乗るのかと思うと憂鬱にはなる。
スマホもないので、手持ち無沙汰。
どうしようかなと思いながら、自分の周囲をキョロキョロ見渡すと、真横に座っておる加藤さんが腕を組みながら、舟をこいでいた。
なるほど、女に人気がある顔……わかる気がする……。
肌もそこらの女よりよっぽど綺麗な気がする……。
少なくとも、ニキビだらけの私より、ずっとツルツルしてる。
一体どんなものを食べれば、こんな肌になるのか……。
触ってみたい。
無意識に、加藤さんの頬に伸ばしそうになっていた自分の手を目にして、自分で驚いた。
何をしているのだ私は……!?
危ない危ない、このままだと逆セクハラで訴えられる……!?
正気に戻って手を引っ込める。
手を膝の上において固く握りしめる。
汗が止まらない。
そういえば、今日は脇汗や首汗が出るような場面が多かった。
どうしよう。汗臭いかな……。
急に気になってきてしまった。
でも、突然電車の中で汗拭きシートで脇を拭くのも変だし……。
今私の頭の中は、汗のことで頭がいっぱいになっていた。
窓の外の景色は、まだまだ目的地には程遠いことを、容赦無く教えてくる。
早く、早く来てくれ、駅よ来い!
その時、嗅ぎなれたミントの香りと同時に、肩に重いものが伸し掛かる。
「ひゃっ!!?」
変な声が出てしまった。
少ないとはいえ、他のも客がいる電車内。
チラホラと「何事か」とこちらを見てくる人もいたので、私は気持ち程度の会釈をした。
そもそも、加藤さんが、私の肩を枕代わりにするのが悪い。
しかも、気持ちよさそうに寝息を立てていた。
その表情は、昼寝を楽しむ猫みたいで、年下という事実も合わさって、可愛いかも……などと思ってしまった。
揺れる電車に合わせ、加藤さんの髪が微かに揺れる。
髪が揺れるたびに、爽やかなミントの香り鼻孔をくすぐる。
この香り……髪の毛からだったんだ……。
何となく恥ずかしい気持ちになった。
気を紛らわすために、窓の外を見ていると、毎日見ている景色が近づいていることがわかった。
間もなく、駅の最寄り駅に着きそう。
時間にして、1分もない。
どうしよう……。
自分で勝手に起きてくれるだろうか。
いっそこのまま放置にすることは、さすがに自分の身の安全を考えると却下。
肩を揺すってみるか。
そう考えながら、加藤さんの肩に手を乗せたその時だった。
どん!
!!????
思いっきり突き飛ばされた。
何で!!???
丁度、私の反対側の隣は空席だったので、軽く体がずれるだけで済んだが、もし誰かいた日には……平謝りものだ。
「ちょっ!なんてこと」
するんですか、と続けるはずだった。
加藤さんの顔が目に入らなければ。
開いた口がふさがらないとは、まさにこのことを言うのだろうか。
そこには、顔を……耳たぶまで真っ赤にした加藤さんがいた。
「あの……?」
と、私が口を開いたと同時に電車の扉が開いた。
その一瞬の時間で、
「先行く!」
と、加藤さんは慌てるように出て行ってしまった。
先行くって……。
目的地……同じじゃないですか……。
人前で恥をさらした恨みとして一言言ってやりたかったが、あっという間にマネージャーは人混みの中に消えてしまった。
「……上司が部下を置き去りにするか普通」
とぼやいてみた。
でも、先ほどの赤面顔が可愛かったので、年上権限で許してあげることにした。
少しは……犬と猿に近づけたのかな。
ハブとマングースよりは。
まあ……一緒に鬼退治っぽいことはしたし?
そう考えながら、私は無意識に、スキップ交じりで駅構内を走っていた。
許可ももらった。
と言うわけで、帰りの電車を調べようとして……気づいてしまった……。
「スマホ、会社に忘れた……」
自分で言うことではないかもしれないが、それなりにスマホ中毒であり、電車の中では1にスマホ、2にスマホという私。
ちなみに最近のマイブームは、この間からやり始めた恋愛シミュレーションゲーム。
だから、よっぽどなことでない限り、自分がスマホを忘れるなんて、あり得ない。
まあ、あんなに動揺していたのだから、仕方がないと言えば、仕方がない。
「……加藤さん……?」
「帰るんでしょう?」
「……一緒に会社戻ります……」
「何で」
「ちょっと残業でもしようかな……と思いまして?」
「……ふーん?」
私の思考なんかお見通し、というような含み笑いを浮かべる加藤さんから目線を逸らして
「はははは」
と乾いた笑いで返すしかなかった。
夜の、都心に向かう電車は、比較的空いている。
この後、反対側の混み込みの電車に乗るのかと思うと憂鬱にはなる。
スマホもないので、手持ち無沙汰。
どうしようかなと思いながら、自分の周囲をキョロキョロ見渡すと、真横に座っておる加藤さんが腕を組みながら、舟をこいでいた。
なるほど、女に人気がある顔……わかる気がする……。
肌もそこらの女よりよっぽど綺麗な気がする……。
少なくとも、ニキビだらけの私より、ずっとツルツルしてる。
一体どんなものを食べれば、こんな肌になるのか……。
触ってみたい。
無意識に、加藤さんの頬に伸ばしそうになっていた自分の手を目にして、自分で驚いた。
何をしているのだ私は……!?
危ない危ない、このままだと逆セクハラで訴えられる……!?
正気に戻って手を引っ込める。
手を膝の上において固く握りしめる。
汗が止まらない。
そういえば、今日は脇汗や首汗が出るような場面が多かった。
どうしよう。汗臭いかな……。
急に気になってきてしまった。
でも、突然電車の中で汗拭きシートで脇を拭くのも変だし……。
今私の頭の中は、汗のことで頭がいっぱいになっていた。
窓の外の景色は、まだまだ目的地には程遠いことを、容赦無く教えてくる。
早く、早く来てくれ、駅よ来い!
その時、嗅ぎなれたミントの香りと同時に、肩に重いものが伸し掛かる。
「ひゃっ!!?」
変な声が出てしまった。
少ないとはいえ、他のも客がいる電車内。
チラホラと「何事か」とこちらを見てくる人もいたので、私は気持ち程度の会釈をした。
そもそも、加藤さんが、私の肩を枕代わりにするのが悪い。
しかも、気持ちよさそうに寝息を立てていた。
その表情は、昼寝を楽しむ猫みたいで、年下という事実も合わさって、可愛いかも……などと思ってしまった。
揺れる電車に合わせ、加藤さんの髪が微かに揺れる。
髪が揺れるたびに、爽やかなミントの香り鼻孔をくすぐる。
この香り……髪の毛からだったんだ……。
何となく恥ずかしい気持ちになった。
気を紛らわすために、窓の外を見ていると、毎日見ている景色が近づいていることがわかった。
間もなく、駅の最寄り駅に着きそう。
時間にして、1分もない。
どうしよう……。
自分で勝手に起きてくれるだろうか。
いっそこのまま放置にすることは、さすがに自分の身の安全を考えると却下。
肩を揺すってみるか。
そう考えながら、加藤さんの肩に手を乗せたその時だった。
どん!
!!????
思いっきり突き飛ばされた。
何で!!???
丁度、私の反対側の隣は空席だったので、軽く体がずれるだけで済んだが、もし誰かいた日には……平謝りものだ。
「ちょっ!なんてこと」
するんですか、と続けるはずだった。
加藤さんの顔が目に入らなければ。
開いた口がふさがらないとは、まさにこのことを言うのだろうか。
そこには、顔を……耳たぶまで真っ赤にした加藤さんがいた。
「あの……?」
と、私が口を開いたと同時に電車の扉が開いた。
その一瞬の時間で、
「先行く!」
と、加藤さんは慌てるように出て行ってしまった。
先行くって……。
目的地……同じじゃないですか……。
人前で恥をさらした恨みとして一言言ってやりたかったが、あっという間にマネージャーは人混みの中に消えてしまった。
「……上司が部下を置き去りにするか普通」
とぼやいてみた。
でも、先ほどの赤面顔が可愛かったので、年上権限で許してあげることにした。
少しは……犬と猿に近づけたのかな。
ハブとマングースよりは。
まあ……一緒に鬼退治っぽいことはしたし?
そう考えながら、私は無意識に、スキップ交じりで駅構内を走っていた。