助けてください!エリート年下上司が、地味な私への溺愛を隠してくれません
「こんなところに落ちてた……」
スマホは、私のデスクの下に隠れていた。
普段なら、スマホは最初にカバンの中にしまうくらいには、スマホ中毒の私。
そんな私が、カバンに入れ忘れたことどころか、床に落としたことすら気づかなかったとは……。
それほどまでに、動揺をしていた、ということなのだろう。
拾って、いつものように着信が企業からのダイレクトメールだけであることを確認する。
そしていつものように、むなしいという気持ちに蓋をしながら、スマホをきちんとカバンの定位置に入れたことを指さし確認までして確認する。
ふと、顔をあげる。
加藤さんはすでに、自分の席でどこかに電話をかけていた。
その側で
「すみません、加藤さん」
と、ペコペコと謝っているのは、加藤さんの取り巻き女子の1人。
明らかに泣き腫らしたというのが分かるくらい、目の周りがパンダのようになっている。
いつもなら、とっととトイレに行って化粧を直すだろうに、さぞそんな余裕もなかったのだろうな、ということは今の私ならばよく分かる。
普段は何かとこちらに突っかかってくるのだが、自分も先ほど似たような思いをしているので、今日のところは心の中でこっそりエールを送っておく。
もう一度加藤さんの方を見る。
何かに決着がついたのか、取り巻き女子がペコペコと泣きじゃくりながら「ありがとうございます」と言っている。
そんな彼女を見ている加藤さんの目は、どこか優しい。
ズキン。
私は、今感じた胸の痛みをなかったことにするように
「お疲れ様でした」
と足早にその場から立ち去ろうとした。
「お、高井さん今帰り?」
オフィスを出ようとした時、違う部署の男性社員2人から声をかけられる。
1人は、明らかにチャラ男だと分かる雰囲気。もう1人は、比べると地味な印象を受けるものの、少なくとも自分よりはオシャレに気を使ってそうなタイプ。地味チャラ男……というところか。
名前は……正直覚えていない。
よくすれ違うな……と、顔だけ漠然と、なんとなくで覚えているレベルの人達だった。
そんな人達が、私を囲んでくる。
何故だ。
「……何ですか?」
無性に今、この場から離れたくてしょうがないのに、止められたことで私は少しずつイライラが募っていた。
「実はさー俺等、この後飲みにいくんだよね」
「あのぉ……?」
誰が好き好んで、誰かの飲み会のスケジュールなど知りたいのだ。
男性社員の言葉の意味を測りかねていると
「実は、女の子1人足りなくなって」
と別の男性社員が、少しすまなそうと言った声色で話してくる。
なるほど。
「もしかして……合コンのお誘いですか?」
「お、高井さん鋭いね」
こいつらに褒められたところで、さほど嬉しくない。
毎朝ルーチンで聞いている、推しの二次元キャラからの「おはよう」「がんばれ」の音声の方が、まだ私の心を動かす。
もしくは……。
「私、合コンに興味ないんで」
そう言えば済むだろうと思ったが
「いやいや、高井ちゃんそれはないでしょ」
「悪い、高井さん。俺らも困ってんだよね」
と、2人が畳み掛けてくる。
そもそも、何故私なんかに声をかける。
周囲を見渡してみれば、それなりにレベルが高い女子は残っている。
まあ……そのうち1名は、今はそれどころではないのは知っているが。
そんな私の考えが分かったのか、チャラ男が
「俺らさ、もっと高井さんと仲良くなりたいと思ってたんだよね」
「私と?」
「そう」
「何でですか」
「面白そうだから」
そう言うと、チャラ男はこそっと私の耳打ちしてくる。
人工的な香水臭さに、むせそうになる。
「あの加藤さんが可愛がってる女ってだけで、十分価値がある」
「はあ?」
チャラ男の言葉の意味を考えあぐねていると
「君達さあ」
少し嫌味を含んだ、声が背後から聞こえてきた。
と思ったと同時に
「ちょっ」
肩をぐいっと引き寄せられた。
ミントの香りが一気に近くなる。
真横を見ると、加藤さんの綺麗な横顔まで、ほんの20cm。
違う意味でクラクラしそう。
スマホは、私のデスクの下に隠れていた。
普段なら、スマホは最初にカバンの中にしまうくらいには、スマホ中毒の私。
そんな私が、カバンに入れ忘れたことどころか、床に落としたことすら気づかなかったとは……。
それほどまでに、動揺をしていた、ということなのだろう。
拾って、いつものように着信が企業からのダイレクトメールだけであることを確認する。
そしていつものように、むなしいという気持ちに蓋をしながら、スマホをきちんとカバンの定位置に入れたことを指さし確認までして確認する。
ふと、顔をあげる。
加藤さんはすでに、自分の席でどこかに電話をかけていた。
その側で
「すみません、加藤さん」
と、ペコペコと謝っているのは、加藤さんの取り巻き女子の1人。
明らかに泣き腫らしたというのが分かるくらい、目の周りがパンダのようになっている。
いつもなら、とっととトイレに行って化粧を直すだろうに、さぞそんな余裕もなかったのだろうな、ということは今の私ならばよく分かる。
普段は何かとこちらに突っかかってくるのだが、自分も先ほど似たような思いをしているので、今日のところは心の中でこっそりエールを送っておく。
もう一度加藤さんの方を見る。
何かに決着がついたのか、取り巻き女子がペコペコと泣きじゃくりながら「ありがとうございます」と言っている。
そんな彼女を見ている加藤さんの目は、どこか優しい。
ズキン。
私は、今感じた胸の痛みをなかったことにするように
「お疲れ様でした」
と足早にその場から立ち去ろうとした。
「お、高井さん今帰り?」
オフィスを出ようとした時、違う部署の男性社員2人から声をかけられる。
1人は、明らかにチャラ男だと分かる雰囲気。もう1人は、比べると地味な印象を受けるものの、少なくとも自分よりはオシャレに気を使ってそうなタイプ。地味チャラ男……というところか。
名前は……正直覚えていない。
よくすれ違うな……と、顔だけ漠然と、なんとなくで覚えているレベルの人達だった。
そんな人達が、私を囲んでくる。
何故だ。
「……何ですか?」
無性に今、この場から離れたくてしょうがないのに、止められたことで私は少しずつイライラが募っていた。
「実はさー俺等、この後飲みにいくんだよね」
「あのぉ……?」
誰が好き好んで、誰かの飲み会のスケジュールなど知りたいのだ。
男性社員の言葉の意味を測りかねていると
「実は、女の子1人足りなくなって」
と別の男性社員が、少しすまなそうと言った声色で話してくる。
なるほど。
「もしかして……合コンのお誘いですか?」
「お、高井さん鋭いね」
こいつらに褒められたところで、さほど嬉しくない。
毎朝ルーチンで聞いている、推しの二次元キャラからの「おはよう」「がんばれ」の音声の方が、まだ私の心を動かす。
もしくは……。
「私、合コンに興味ないんで」
そう言えば済むだろうと思ったが
「いやいや、高井ちゃんそれはないでしょ」
「悪い、高井さん。俺らも困ってんだよね」
と、2人が畳み掛けてくる。
そもそも、何故私なんかに声をかける。
周囲を見渡してみれば、それなりにレベルが高い女子は残っている。
まあ……そのうち1名は、今はそれどころではないのは知っているが。
そんな私の考えが分かったのか、チャラ男が
「俺らさ、もっと高井さんと仲良くなりたいと思ってたんだよね」
「私と?」
「そう」
「何でですか」
「面白そうだから」
そう言うと、チャラ男はこそっと私の耳打ちしてくる。
人工的な香水臭さに、むせそうになる。
「あの加藤さんが可愛がってる女ってだけで、十分価値がある」
「はあ?」
チャラ男の言葉の意味を考えあぐねていると
「君達さあ」
少し嫌味を含んだ、声が背後から聞こえてきた。
と思ったと同時に
「ちょっ」
肩をぐいっと引き寄せられた。
ミントの香りが一気に近くなる。
真横を見ると、加藤さんの綺麗な横顔まで、ほんの20cm。
違う意味でクラクラしそう。