助けてください!エリート年下上司が、地味な私への溺愛を隠してくれません
「もし、あなたがここで倒れたとする」

……ん?
何の話だ?

「それで、もしあなたがここのつるっつるの床にあなたが頭をぶつけて出血多量で死ぬとする」

それはさすがに突拍子もない発想すぎないか?
しかし、彼女は至極当然、と言いたげな表情で、堂々とそれを主張する。

その真剣さが、とても微笑ましいと思ったし、それ程までに自分のことを気遣ってくれた、という事実はとても嬉しかった。

「ありがとうございます」
「どういたしまして……、あ、そだ」

彼女はポケットから名刺を取り出して、僕に押し付ける。

「本当は病院に行って欲しいんですけど……本当に具合悪くて、どうしても誰か人が必要だったら、連絡くださいね」
「あ、ありが……」
と、お礼を言う前に、彼女は素早く丁寧すぎる程の会釈をして、重い荷物を持っている割には速いスピードで走り去った。

嵐のような出来事だ、と思った。
しかし、それが良かったのだろう。
緊張がほぐれたのか、肩の力が抜けたのが分かった。
深呼吸をしてみる。丁寧に。
すうっと、肺に新鮮な空気が染み渡る。
頭は、スッキリしてきた。
思考する力が、蘇ってくる。
今自分が、まず何をすべきかというアイディアが、次から次へと湧いてくる。

戦える……違う……勝てる気が、した。

何故急にそんな心境になったのかは、後で調べてみよう。
とにかく、今のこの気持ちのまま、行こう。

手にしていた「たこ焼きラムネ」の栓を開ける。
ビー玉が一発でころんっと落ちる。
幸先がいい気がする。
一口、飲んでみる。

「…………まずっ」

ソースに砂糖を思いっきり混ぜたような味。
それでいて、炭酸の喉越しは良い。
ちぐはぐな味がする。
しかし、その味がよかったのか。
もしくは単に糖分が頭に入ったのがよかったのか。

完全に僕の頭は、戦闘モードに切り替わることができた。
< 21 / 88 >

この作品をシェア

pagetop