助けてください!エリート年下上司が、地味な私への溺愛を隠してくれません
まさか、履歴書で彼女の顔を見るなんて……思いもしなかった。

僕は差し出された履歴書と経歴書をじっくり見る。
高井綾香の経歴はYAIDA1社だけ。
新卒入社後、営業部に1年程いた後に人事部、広報部の経験を積み、最後は総務部にいた。
そして、年齢は、僕よりかなり年上……。
見た感じ、同い年か少し下だと思っていたのに……。

「加藤さん?この方、いかがですか」
「あ、ああ……いいんじゃないでしょうか……」
「承知いたしました。明日面談して参ります。また結果を報告いたしますね」
「お、お願いします……」

その人が去ろうとしていたのを、一瞬見送ろうとしたが

「待って!」

僕は急いでその人を追いかけた。
そしてその人に小声で

「できれば……面接の時間が決まったら、僕にも教えてくれませんか?」
「……承知……しました」

少し引かれている、というのは明らかに分かる表情だった。


正直その後は、仕事にならなかった。

「加藤さん?」
「あっ、ああ、どうした?」

部下から、企業へのプレゼン方法を相談されている時も……。

「あのぉ……今の俺の話、どう思いますか?」
「……え?」

全く、頭に入ってこない。
この部下は、プレゼン能力ならピカイチ。
アナウンサーの採用試験で最終まで進んだくらいには、伝えるというスキルには長けている。
そんな人間のプレゼンなはずなのに、一文字も記憶に残っていない。

僕はそれ程にも、明日彼女……高井綾香がこのオフィスに来るということに頭が持っていかれていた。
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