助けてください!エリート年下上司が、地味な私への溺愛を隠してくれません
会社のオフィスから、歩いて30秒の憩いの場。
ランチの時はもはや社食か……?と言っても良いくらい、うちの会社の人達がこそって押し寄せる地下居酒屋の個室に、私たちはいる。
男3名に女2名。きっと側から見ると合コンのようにも
見えるかもしれない。
が、私たちはそんな甘々とした可愛らしい集団ではない。
どちらかといえば……戦場で共に厳しい戦いを乗り越えようとしている同志……もしくは戦友、と言っても過言ではない。

私と河西君以外の3人はCA……キャリアアドバイザーだ。

私たち営業は企業向けに
「この人、転職者としてどうですか?」
と紹介する仕事。
その一方でその転職者のケアをし、転職の相談に乗るのが、CAの重大なミッション。

営業が考えている軸は、企業様の事だけ。
転職者の事情ではなく、企業様の都合を伺いながら、時には非常に転職者を切り捨てることを要求されるのが営業の仕事でもある。

一方で、企業の意思は尊重しつつも、基本的には転職者に寄り添い、可能な限り希望に答えられる方法を導き出すというのが、CAの仕事。

時にはチームとして協力し合うが、場合によっては敵対することもある。
そんな関係性ではあるのだが、今のところ私たちはどちらの形でも一緒に仕事ができていない。

いつか、そんな日が来るかも知れない。
どうせなら、チームとして一緒に仕事がしたい。
そう、心から思える程仲良くなったのが、この3人なのだ。

「みんな、飲み物は来てる?」

こんな時の進行は、自然と河西君になる。飲み会の場でも堂々とリーダーシップを発揮できるのは、本気で尊敬する。

「ええと……男性陣は全員ビールだから、ピッチャーとグラスあれば良さそうだな」

ピッチャービールは、席に着いたタイミングですぐに注文したため、すでに汗をかきながら待機していた。

「高井さんと三条ちゃんは、飲み物頼んだ?」
「あ、ハイボール!注文します!」

私の最初の1杯はこれ、と決まっている。
一方もう1人の女子……三条ちゃんこと、三条音緒ちゃんは飲み物メニューを真剣に見ながら、私に話しかけてきた。

「高井さん……ハイボールって、どんな味がしますか?」
「三条ちゃん飲んだことないの?」
「はい……パパとママがワイン以外なかなか飲ませてくれなくて……」
「そしたら、ワインでも良いんじゃない?」
「でも、せっかくだし……違うお酒にも挑戦してみたい気も……」
「……じゃあ私と同じハイボール頼んでみる?んで、三条ちゃんが飲めそうになかったら私が代わりに飲んであげる、で、三条ちゃんは慣れたワインを頼む。これでどう?」
「あ、はい、お願いします」

こんなやりとりをして、どうにか全員最初の一杯が出てきた時、河西君がこほん、と咳払いをしてグラスを掲げた。

「それでは皆さん!本日も戦争、お疲れ様でした〜!!」
「「「「お疲れ様〜」」」」

健闘を讃えながら飲むアルコールは、妙に体に沁みた。
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