助けてください!エリート年下上司が、地味な私への溺愛を隠してくれません
見たところ、加藤さんと井上さんは、2人で入ってきた……。
ということは……。

「ねえ、河西君……」
「どうした高井さん、目が据わってるぞ、水飲め、水」

河西君が差し出してきたお冷の受け取りを拒否しながら

「あの鬼上司……自分が可愛い部下と一緒にデートしたいから……仕事押し付けたんじゃ……」

どんっと私はテーブルを叩く。
その振動で、テーブルの上でに置かれていたフライドポテトが宙を舞った。

「ちょ、高井さん、もしかしてまじで酔ってる?」
「あはは、高井さんいいっすね〜その意気っす〜、ほら、俺のもまだ残ってるんで飲みます?」
「あ、早瀬こら!渡すな!」

河西君が静止する声が聞こえた気がしたが、今は強い酒でも飲まなきゃやってけない。
私はぐいっと早瀬君から渡されたグラスの中身を飲み干した。

「高井さん、まじかっけー!惚れそうっす!!」
「ふふふ。いいともよ」

どうだ、こんな可愛い年下だっているのだ。
あんな、仕事中は鬼な癖に……可愛い子を連れてデレデレしている上司とは、全然違う。
わんこみたいに可愛い。
私は早瀬君のくりくりっとした髪の毛をわしゃわしゃ撫でながら

「可愛いな〜早瀬君みたいな弟がいたら、めっちゃ可愛がるんだろうな」
「え〜俺弟いやっす〜。どうせなら……」

早瀬君が何かを言った気がした。
その時

「うっ……!」

急に吐き気を催した。
まずい、飲み過ぎたか……!

「高井さん大丈夫か!?吐く?吐くのか?」
「ウー……」

私は唸り声をあげるしかできない。

「しょうがない……高井さん、俺に捕まって。トイレ行くよ」
「あ〜い……」

あれ、呂律が回らない。
頭もふわふわする。
それなのに、食堂まで込み上げる何かがきている。

「うっ……」
「高井さん、負けるな!耐えろ!鬼上司が近くにいるんだぞ!」
「はっ!!」

その言葉が効果があるなんて思いたくないけど、確かにその一瞬だけ、私の頭は正常に働いた。
だがしかし、どうにか河西君によってトイレに放り込まれた時に、決壊のごとくリバースしてしまった。
……スッキリは、した。
でも女としては……最悪だ……。
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