助けてください!エリート年下上司が、地味な私への溺愛を隠してくれません
はあ……やっと、1日の半分終わった……。
あれから、休憩時間も取れないまま、電話をかけ続け、気が付けば夕方4時を過ぎていた。
どうにか1件、アポは取れた。
とても優しそうなおじさんだったので、前職で培ったスキルで口説き落とした。
会社の名前はぽんぽこ幸せ株式会社。
……性格良い人が集まりそうな社名だ。
「よし、今のうちにご飯食べよ」
ということで、自作の弁当を食堂で広げていると、
「高井さん?」
中途入社の唯一の同期、河西君が声をかけてきた。
「どうしたの!もう夕方だよ」
「それは高井さんもでしょ」
「……私はアポ取りの電話が忙しくて……。そっちは?」
「俺はさっきまで外回り。やっと社に戻って来れた。で、コーヒーブレイク中」
「なるほど」
「高井さんこそ、そのお弁当自分で作ったの?」
「……一応……節約は大事だし」
河西君が、私が広げている弁当をじっと見る。
人に自分の食べかけを見られるのは、ちょっと恥ずかしい。
「へえ、うまそーじゃん」
「あ、ありがとう」
邪気がない笑顔がまぶい。
……鬼の後に天使を見るって、こんなに癒されるものなのか……。
この、ワンコのように人懐っこい笑顔で、次々と契約を決めてくるため、次世代エースと称されているのは、河西大樹。
人当たりの良さは社内でも人気が高い。
さぞ今年のバレンタインには、山のようなチョコレートを受け取るのだろう。
今のうちに高級チョコのおこぼれをもらえないか、先に予約をしておきたい。
「そういえば、聞いたよ」
「何を?」
「またやったんだって?加藤マネージャーとの対決」
やめてー。
せっかく、かろうじて、ちょーっと上がった幸せメーターが、一気にマイナスになるからー。
「今度は何があったのさ?」
「聞いてよ聞いてよ……あのクソ上司!入社以来ぶっちぎりのトップ成績だったとか、少し顔が良くてちやほやされてるからってー!少しは年上を敬いなさいよー!」
「いや、俺ら、年は上でもあっちの方が地位も社歴も上だし」
河西君は私と同い年。
私と違って、堂々と三十路街道歩いている。
いや、むしろ三十路という、二十代の若造にはない頼りにしたくなるフレーズが、より彼の良さを増加させている。
「地位なんて、会社から一歩でも出たら、飯の足しにもならないよ!」
私はムッとしながら弁当に入ってるソーセージにフォークをぶっさす。
ぷつりという音がとても気持ちいい。
「不思議だなぁ……」
「何が」
「他の女性社員たちはキャーキャー言ってるぞ。女ってああいう顔が好みなんじゃ」
「……第一印象が最悪なら、顔見ることすら拷問」
「そりゃひでえな」
「河西君のところはどう?マネージャーさん……」
「そうだなぁ……一見ぼーっとしてるんだけど、締めるところは締めるって感じかな」
「マネージャーの鏡だね」
「そんなに嫌なら、チーム変わればいいのに……俺んとこでも話題だぞ。あのハブとマングースは離した方が良いんじゃないかって」
「せめて犬と猿にして」
「それくらいおっかないってこと」
おっかないのは私じゃない。
あっちだ、あっち。
一緒にしないでもらいたいね。
「にしても、加藤マネージャー……他の社員にはあそこまで言ってるの、見たことないぞ」
「……そうなの?」
「うちのマネージャーも、あの冷静な加藤君がねぇ……って感心してたくらい」
「冷静?あれの?どこが?」
はっ。
いけないいけない、このままでは血圧が上る……。
深呼吸、深呼吸。
私は、ソーセージを一気に口に含み、思いっきり噛み締め、ごくんと丸呑みした。
あれから、休憩時間も取れないまま、電話をかけ続け、気が付けば夕方4時を過ぎていた。
どうにか1件、アポは取れた。
とても優しそうなおじさんだったので、前職で培ったスキルで口説き落とした。
会社の名前はぽんぽこ幸せ株式会社。
……性格良い人が集まりそうな社名だ。
「よし、今のうちにご飯食べよ」
ということで、自作の弁当を食堂で広げていると、
「高井さん?」
中途入社の唯一の同期、河西君が声をかけてきた。
「どうしたの!もう夕方だよ」
「それは高井さんもでしょ」
「……私はアポ取りの電話が忙しくて……。そっちは?」
「俺はさっきまで外回り。やっと社に戻って来れた。で、コーヒーブレイク中」
「なるほど」
「高井さんこそ、そのお弁当自分で作ったの?」
「……一応……節約は大事だし」
河西君が、私が広げている弁当をじっと見る。
人に自分の食べかけを見られるのは、ちょっと恥ずかしい。
「へえ、うまそーじゃん」
「あ、ありがとう」
邪気がない笑顔がまぶい。
……鬼の後に天使を見るって、こんなに癒されるものなのか……。
この、ワンコのように人懐っこい笑顔で、次々と契約を決めてくるため、次世代エースと称されているのは、河西大樹。
人当たりの良さは社内でも人気が高い。
さぞ今年のバレンタインには、山のようなチョコレートを受け取るのだろう。
今のうちに高級チョコのおこぼれをもらえないか、先に予約をしておきたい。
「そういえば、聞いたよ」
「何を?」
「またやったんだって?加藤マネージャーとの対決」
やめてー。
せっかく、かろうじて、ちょーっと上がった幸せメーターが、一気にマイナスになるからー。
「今度は何があったのさ?」
「聞いてよ聞いてよ……あのクソ上司!入社以来ぶっちぎりのトップ成績だったとか、少し顔が良くてちやほやされてるからってー!少しは年上を敬いなさいよー!」
「いや、俺ら、年は上でもあっちの方が地位も社歴も上だし」
河西君は私と同い年。
私と違って、堂々と三十路街道歩いている。
いや、むしろ三十路という、二十代の若造にはない頼りにしたくなるフレーズが、より彼の良さを増加させている。
「地位なんて、会社から一歩でも出たら、飯の足しにもならないよ!」
私はムッとしながら弁当に入ってるソーセージにフォークをぶっさす。
ぷつりという音がとても気持ちいい。
「不思議だなぁ……」
「何が」
「他の女性社員たちはキャーキャー言ってるぞ。女ってああいう顔が好みなんじゃ」
「……第一印象が最悪なら、顔見ることすら拷問」
「そりゃひでえな」
「河西君のところはどう?マネージャーさん……」
「そうだなぁ……一見ぼーっとしてるんだけど、締めるところは締めるって感じかな」
「マネージャーの鏡だね」
「そんなに嫌なら、チーム変わればいいのに……俺んとこでも話題だぞ。あのハブとマングースは離した方が良いんじゃないかって」
「せめて犬と猿にして」
「それくらいおっかないってこと」
おっかないのは私じゃない。
あっちだ、あっち。
一緒にしないでもらいたいね。
「にしても、加藤マネージャー……他の社員にはあそこまで言ってるの、見たことないぞ」
「……そうなの?」
「うちのマネージャーも、あの冷静な加藤君がねぇ……って感心してたくらい」
「冷静?あれの?どこが?」
はっ。
いけないいけない、このままでは血圧が上る……。
深呼吸、深呼吸。
私は、ソーセージを一気に口に含み、思いっきり噛み締め、ごくんと丸呑みした。