助けてください!エリート年下上司が、地味な私への溺愛を隠してくれません
息が掛かるほどの、至近距離。
それも。
真正面からこの顔を見るのは……初めてかもしれない。
が、今はそんな事をぼけっと考えている場合じゃない!

「加藤さん!ちょっと!どいてください……!」
「やだ」
「やだってなんですか!」

加藤さんが、何だか子供のように駄々をこね始めた。
もしかしなくても……。

「……もしかして……酔ってます?」
「酔ってない!」

いや、明らかに呂律が回ってない。

「加藤さんもお水飲みましょう……!」

私は、加藤さんがくれた蜂蜜レモン水のおかげか、だんだん酔いが覚めていた。
同じものを飲ませれば、今のありえない状況に気づいてくれるだろう……!
私は体をよじり、どうにか加藤さんの腕の中から出ようとするが

「どこに行くつもりだ」

体をがっしり固定される。

「水!取ってきますから!!」
「必要ない」
「必要大ありじゃないですか!正気じゃないですよ!」
「正気じゃないのは君の方だ」
「……はい?」
「そもそも、僕とはランチ行かないじゃないか」

待て。
今の今で、何故その話?

「ランチの約束って……もしかしてぽんぽこの日のこと言ってます!?」
「…………他に何があるんだ」
「あの時、ドタキャンしたのは加藤さんの方じゃないですか!急にトラブル対応が入ったからって!!」

そう。
結局あの後。
こっちが言われた通り、ちょっとオシャレでお高そうな、ランチができるレストランを見つけたので、クーポン付き予約サイトのURLを送ったと言うのに、肝心なお昼時になって

「急にクライアント対応入った、違う日にして」

と言ってドタキャンしてきたのだ。加藤さんの方が。
それなのに

「私が責められるのおかしくないですか!?」
「僕は違う日にしてと言った!それなのに、ちっとも動かなかったじゃないか。即断即決が仕事のコツだと教えただろう!?」
「これ仕事じゃない!それに何で私がセッティングしなきゃいけないんですか!そっちがキャンセルしたんだから、そっちがやればよかったじゃないですか!むしろドタキャンされたのはこっちですよ!」
「…………それは……っ!」

そう言うと、加藤さんは顔を真っ赤にした。
な……何だ……?
私は次の言葉を、息を飲みながら待った。

「…………てたんだ……」

……は?
今何と……?
小声すぎて、良く聞こえなかった。

「すみません、聞こえなかったのでもう1回いいですか……?」
「だから!待ってたんだ!君から誘われるのを……」
「…………は?」

はああああああ!!?
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